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第四回 「チャンバラ、バラバラ、ヨロヨロ」 望山ローラ


とりあえず、中村錦之助が好き。
昔の東映のチャンバラが好き。
御大ふたりが同じ秒数アップになるあの構造が好き。
正義の味方がいつも勝つのも好き。

大川恵子という女優を知っている(覚えている)ひとがどのくらいいるだろうか。
何だか知らないけれど、この方がこの世でいちばん好きな女優さん。

週刊の漫画雑誌を喫茶店で読んでいたら、月形龍之介生誕100年という記事が載っていた。
私にとって水戸黄門といったら月形龍之介だ。
大河内伝次郎の水戸黄門は 同時代に見ていないので、月形程の思い入れはない。
リアルタイムで見ていないといっても、今どきの人が昔のチャンバラをビデオで見るのとは違うと思う。
少なくとも大河内の水戸黄門もスクリーンで見た。
何と言ってもビデオは見えなくてもよいものまで見えてしまうからね。

昔の観客は「お約束」にはいちゃもんをつけない。
「お約束」にツッコミを入れないはセオリーだった。
錦之助の目張りの厚さに文句はつけない、映画館で見てきれいならよい。
当時でさえタクシーの運転手に本人だと言っても信じてもらえなかった。
素顔ではだれもスターだとは解らなかった、という笑い話が有ったくらいだもの。

水戸黄門に話を戻す。
東野英治郎も月形と同じで「脱いだら怖いんです型(ほんとに脱ぐわけではないよ)」の底の深い怖さがあった。
水戸黄門は裏表のない良い人では絶対だめなキャラクターだ。
前者がお庄屋様の怖さなら、後者は武士の怖さなので私の好みに合う。
この差は映画とテレビというメディアの違いから来るもので役者の力量の問題ではないと思う。

あ〜、なんでここで話が堂々めぐりをしているかというと、わたくしは「ご幼少のみぎり」毎週毎週東映時代劇を見ておりまた。
それに日活映画ももれなくついてきた。
たまには大映か松竹もいっしょの三本立て。
休日には父と町に出て洋画か東宝を見ることもあった。
時には映画館の映写室で、出前をとってもらったラーメンを食べながらの映画鑑賞だ。
考えてみるとあまり他人は経験したことののないことだと思うので、とりあえず自慢しておきたいみたいだ。

一年間で年間150本近く映画を見る小、中学生なんてざらにはいないはずでしょう。
週1回の映画鑑賞は自分で選んで見ていたわけではない。
いわゆる子供のシジミ売り・れっきとしたお仕事だった。
週一回映画が巡回してくる場所で、あんパンやチョコレートを売っていた。
田舎は途方もない山の中にあった。
そこは売店と客席に仕切りが無かったので特等席で鑑賞させていただきました。
これは純粋に役得だった。



東映が好きだ。
中村(萬屋)錦之助や大川橋蔵のほうが石原裕次郎や小林旭よりもかっこよかったから(私にとってね)だけではない。

あの頃の東映のプログラムピクチャーの悪役たちがなんとも魅力的だった。
彼らの華麗さ、豪華さは目を見張るばかりだった。
吉良上野介とか柳沢吉保とかの大物悪役を演じていたは薄田研二だ。
骸骨のように痩せたおじいさんだ(子供にはそう見えた)。
この方は本当に大好きだった。
前歴はなんと築地小劇場にも出たことがあるばりばりの新劇人だそうだ。

その他にも当時の俳優座の幹部達とかが、大勢悪役で出演していた。
後期には若き日の平幹二朗も悪徳番頭役で出演していたと思う。

それとはべつに層の厚い悪役陣が専属でいた。
英国出身といううわさのあった山形勲とか、松原千明のお父さんやらの超ハンサムが悪役だったのだから、それはもう・・・。
川谷拓三の父上も息子とは比べ物にならないくらいの美形悪役だった。
後年の悪役商会なんか比較にならない顔触れだったと思う。

プログラムピクチャーのだいご味(そんなこと解らないと言われたら返す言葉も無い・・・)は、大まじめに作ったモノでないと味わえないと思っている。
東映の場合は悪役がだいたい三層構造(裏切り者・悪・影の大物)。
ヒーロー系も三層構造(御大・スター・若手)。
これが縦横無尽に組合わせる事が出来るので毎週見ていても飽きない。
時々、月形や進藤英太郎の「大久保彦左衛門」みたいにヒールがベビードールになるのも一興。
そこへいくと日活は悪役が淋しい。
大映の柳栄二郎だけというのもまた淋しい。

東映映画の女優はあきれるほど単純な構成だった。
きれいなお嬢さんまたはお姫さましか出てこない。
人格的に納得できる女が出てくるようになったのは、錦之助が文芸モノに意欲をだすようになってからだ。
そう子供心ながらにも理解していた。

当時の東映城の三人娘が、大川恵子・桜町弘子・丘さとみの三人だった。
なんとなくお姫さま・武家娘・町娘を少しクロスしながらも職分を分担する。
各人が月に一本以上の作品に出演していたと思う。
年間14〜5本の出演だ。
「凄い」としか言えない。

ちょっと文芸がかった作品はこの三人の活躍した時代には少なかった。
あったとしても俳優座の女優が出たり、その作品のためだけの新人女優が出演したりしていた。
その下の世代の佐久間良子や三田佳子の時にはチャンバラの人気が落ちてきてしまった。
それが幸いして東映といえども、女優の出る幕が増えた。
彼女達は良い役に巡り合えることが出来たが、三人娘にはそんなものは無かった。




それでも、大川恵子には白黒だったけれどお姫さまが男装をして大活躍をするという主演作があった。
とりあえず主演なので良い役としておこう。
しかしスターダムにのることはできなかった。
うまくいったらテレビの「琴姫七変化」の松山容子のように看板スターになれたかもしれないのに。
あの人には覇気というものが足りない。
男優だったら人気に乗りそこねた伏見扇太郎タイプかな、ちょっと違うな。
まぁ〜それだからこそ好きだったのだと今では思う。

彼女の出演作でもう一度みたい作品の筆頭は「鴬城の花嫁」。
昔むかし、あるところの鴬城に3人のお姫さまがおりました。
みんな適齢期で、いろいろあって最後にそれぞれ幸せなるっていうだけのお話。
「鳳城の花嫁」→東映最初のカラーシネスコ作品、「孔雀城の花嫁」→美空ひばり主演の2作に挟まれたまさに3部作の穴埋め的作品。
すてきなおとぎ話だった。
殿様の三島雅夫がいつもは悪役なのに、ここではのんきな殿様。
薄田研二の次に大好きな悪役だった。
お顔が真ん丸でかわいい。

ここまで書いて、急に自分自身を発掘・発見。
男優は美醜ではなく単純に丸いか、ひょろ長いくあれば好きになるのだ、という法則性がわかった。
がく然。
齢ン十年こんなこと理解するのにこんなに時間がかかるのか。

えらの張っている顔も嫌いじゃないぞ。
なんてったて仲村トオルのファンだ。
しかも仲村トオルがうまいと思っているぞ。
・・・情けないかもしれない。
日活だったら笹森礼子が好きだった。アッこれは女優か。
赤木圭一郎ということにしておこう。

デ、前に戻ると女優は寂しい雰囲気のやつが好きみたいだ。
貧しいではなく、寂しい限定。
大川恵子は何だかいつも寂しい。
おとぎ話のような「鴬城の花嫁」でお姫さまをしていても。
夜着姿でたっているだけで凛としてはいるが涼やかな寂しさが漂う。
定番のように演じる長屋に住む浪人の娘、忠臣蔵の瑶泉院とかも似合っているなぁ。
芸の幅が狭いことがよい意味で生きている存在(女優)。
東映チャンバラ時代に咲く谷間の白百合ってとこかな。

未練もあまり無さそうに、すっぱり引退してしまったことも彼女らしかった。
本当にがっかりさせてくれました。
好きな錦之助とのカップリングよりも、大川橋蔵とのほうが似合っていたのもなんかしゃくだったな。
けれど、やっぱり好きなものは好きということなのかな。

ここまで書いて唐突に話は終り、いえ「終」ではなく「続」です。
これっぽしの分量では、ぜぇ〜ったい書きたいことが書ききれないでぇ〜す。
一回だけではただの予告編(本編は永遠に有りそうもない)でしかないだ。

ご拝読ありがとうございました。
iGalleryの「iの研究」のむこうをはって展開する(予定)の「好きの研究」の前説、
与太話だと思っていただければ幸いです。

「鳳城の花嫁」以外の好きな映画
「殿様弥次喜多」
「真田風雲録」
「風雲児」
についてはまた後で。

<第四回終わり>




望山ローラ

女性
都内在住
自営業
趣味 感激


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