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iの研究

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第七回 <難解>の研究(2)


さて、<難解>の二回目です。
今回は市場=
「マーケット」の話をします。
この話は、直接的には<難解>と関係はないのですが、
わたしは、
<難解>の背後に控えている重要な問題だと思ってます。

美術品は商品という側面ももっています。
美術の教科書や美術評論の本にはいちいち価格が載ってませんが、やっぱり商品なのです。
しかも特殊な商品です。
普通、商品は使うと価値が減ります。
食品なんか、食べれば終わりですね。
だが、美術品の価値は減りません。
新品も中古もない。
新作はありますが、意味が違いますよね。
減るどころか、うまくすると価値が何千倍にも増えます。

又、美術品は貨幣と同じような働きを持っています。
例えば、戦争があったり経済混乱が生じてお金が紙屑同然になったとします。
銀行の預金も同様です。
貨幣の信用がなくなった時ですね。
(昔は金本位制といって、貨幣は金に交換できたのですが、今は出来ません。つまり、全くの信用で貨幣は成り立っています。)
もしわたしがそんな時、モネの「睡蓮」を所有していたら全然平気です。
貨幣が正常に使用されている国に行って「睡蓮」を売っぱらって、その貨幣で必要なものを買えばいいわけですから。
もちろん、国内で欲しい人にはわたしの必要なモノと、または外国の貨幣と交換もできます。
貨幣と同等の価値が美術品にはある訳です。

貴金属も同じですね。
戦争になると、イザという時の為に貴金属を大切に隠します。
それは、その商品に通常の商品とは異なる価値が備わっているからです。
国を超えた高額な価値がそこにはあります。
又、貨幣には物的価値はありませんが、美術品にはあります。
それを飾って眺める楽しみもあるわけです。
預金通帳を眺めて楽しむ抽象的趣味の人もいますが、これは例外。


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商品には市場=
「マーケット」が必要です。
鮮魚だったら築地市場とかね。
現代美術の
「マーケット」は何処にあるのでしょうか?
今はアメリカ=ニューヨークだと思います。
アート・ディーラーの数からいっても、ニューヨークじゃないでしょうか。
以前はヨーロッパだったでしょう。

「マーケット」は需要と供給から成り立ちます。
買い手がいて売り手がいて、そこで価格が決まります。
ここにも美術品の特殊性が顕れます。
つまり、投機という問題が出てきます。
投機というのは、絵画が好きだとか、彫刻が好きだとかは関係ない世界です。
幾らで買って、幾らで売れば、幾ら儲かるか、の世界です。
株券がいい例ですね。
株券は本来、投資した会社の配当を受けるための証書です。
銀行にお金を預けるよりリスクはあるが、その会社が利益を上げればリターンも大きい。
会社の将来性、収益性を勘案して投資するのが、株式を買う基本。
しかし、実際は
「マーケット」での値動きで売り買いが行われています。
投機ですね。
ゴルフ会員権だってそうです。
ゴルフやらないのに幾つもの会員権を持ってて、頻繁に売り買いするのは投機。
その投機が、実際の現代美術の作品の価格を決める一つの大きな要素になっているのではないかと、わたしは推測してます。
だって、デビュー時には一万円で買えた作品が二年後には百万円とかになる世界ですから。
これは投機筋がいない方がおかしい。

バブルの頃を思い出して下さい。
銀行に金がだぶついて貸し出しに躍起となりましたね。
企業はお金を借りません、なぜなら自分のところに充分ありますから。
そうすると銀行は土地、株券、美術品を買うように勧めます。
絶対に儲かるからと言って、お金を貸し付けるわけです。
投機の勧めです。
その結果、一時現代美術の著名作品も日本に流入しました。
買った人は現代美術が好きでも何でもない人たちです。
マネーゲームとして買っただけです。
バブルが弾けると、作品は御存知のように日本から出ていきました。
キーファーの作品群が好例ですね。


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さて、投機が現代美術の
「マーケット」でも力を持っている事はお解りいただけたと思います。
この投機そのものは<難解>とは関係ありませんが、現代美術の
「マーケット」を説明する上では欠かせないと思い書いてみました。
もちろん、現代美術が好きでコレクションをしている方も大勢います。
が、この方たちだって作品を財産(換金価値のある)と考えているはずです。
美術品のマーケットの特性から考えて当然です。
欧米の会社が作品を購入するのも、資産価値プラス税制上の優遇として考えているからではないでしょうか。(及び、投機ですね。)

そして、この
「マーケット」の主役は・・・・・。
白人のアッパーですね。
売る方も買う方も。
お金の流動、景気の良し悪しでそれ以外の買い手もいますが、やっぱり白人のアッパーが主役。
それも、アメリカのアッパーの白人。
アメリカは西欧の飛び地です。
そう考えた方が納得がいくことが多い。
アングロサクソンかユーロか分らないが、それの飛び地。
ですから、基本の文化環境はあっち。
現代「アッパー」の中心地、現代「都市」の代名詞ニューヨーク、「ヒマ人」の集まるところもニューヨーク、これだけ出そろうと、研究(1)で言った事が今はこうなっているとお解りいただけるでしょうか。
アメリカはいろんな面で面白い国です。
結局、20世紀はアメリカを中心とした100年とも言えます。
アメリカの影響力を考えると研究課題がいっぱいありそうです。
ここでは、西洋本流と繋がっている事がポイントになります。

さてさて、ここからが問題。
白人のアッパーが主役であるということは、そこに当然主役の意識が反映されますよね。
第三世界の美術を取り込もうが、サブカルを取り込もうが、西洋美術の大きな流れの現在としての現代美術のポジションは外さない。
グローバルになっても現代美術を支えるシステムは変わってないわけです。
研究(1)でポイントとした
<難解>は、当然<難解>として続くわけです。


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ここで唐突に、相撲を例にとって説明してみます。
相撲は日本の国技であるとか、ないとか言われてますが、ま、とにかく日本の伝統です。
歴史も有るし、宗教的背景も具えてます。
しかし、そんな事に関係なく日本人は楽しめます。
塩を何故まくとか、仕切りは何のためにやってるのか考えなくてもね。
そういう文化的背景があるわけです。
相撲界は日本の業界の方が仕切ってます。
当たり前ですが。
外人が入ってきてもそのシキタリに従わせます。
スポーツじゃないわけです、相撲は。
(どちらかと言うと芸能じゃないでしょうか。芸能だったら星の貸し借りもアリですよね。)
スポーツは言ってみれば、西洋運動です。
オリンピックは世界的西洋運動会。
柔道はそっちに入って、スポーツになったからカラー柔道着を認めざるを得ないんですね。
オリンピックを仕切っているのは西洋人ですから。
相撲の観客はほとんど日本人。
相撲のマーケットの売り手と買い手は日本人です

前回は現代美術を、わたしなりに歴史的、社会的に探ってみました。
何故
<難解>なのかを解き明かす為です。
しかし、経済が大きな力を持っている実際の社会の中での現代美術の位置、
これを見てみないと
<難解>の裏側が掴めないのではないかと思いました。
表と裏を見ないと実相が解らない、と考えたわけです。
「マーケット」もやはり西洋美術の延長線上にあるようです。
白人が支え、白人が顧客。
ですから、日本人は作家もコレクターも「お客さん」です。
しかも、日本には現代美術の
「マーケット」は存在しない。
やはり
「マーケット」<難解>と間接的に関係があるのではないでしょうか?
(逆に言うと、日本に
「マーケット」が出来れば<難解>は受け入れられるかもしれません。)

次回も<難解>の研究です。
「前衛」を探って一応終わりにしたいと思います。
予定としては、間に違う研究を入れます。
<美貌>の研究。
何かイイでしょ?
面白そうでしょ?
ま、実際に面白くなるかは定かではないです。
これから考えますので。
ええ、いつも行き当たりばったりでやってんですよ、この研究。
それでは。

<第七回終わり>


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